| ワークショップ・講演録 |
| 講演日時 |
2008年7月9日(水) 18:30〜21:00 |
| 講演場所 |
大阪市立大学大学院 梅田サテライト 101号室 |
| 講 師 |
コクヨ株式会社
取締役 小谷 洋一氏 |
| 講義内容 |
IT活用とガバナンス −コクヨの事例を中心に− |
| 報告者 |
木村 聡・李 丹丹 |
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| ■ 講演内容 |
「IT経営とガバナンス」という大きなテーマのもと、講師は自社のケースおよび自らの経験を題材に、「経営に寄与するIT活用」という観点で講演を行った。そこには、経営のトップとIT部門との意見の隔たりやギャップを解決する、という強い意志が込められており、高度情報通信社会である現代の多くの企業が抱える問題を解決するヒントが隠されている。
講師が勤務しているコクヨグループは、言わずと知れた紙製品や事務機、オフィス家具などの製造を手掛ける文具メーカーであり、顧客の視点を重視した「ひらめき」「はかどり」「ここちよさ」を提供すること、世の中の知的活動に貢献することを経営ビジョンとして掲げている。環境問題にも積極的に取り組んでおり、環境基準を満たしていない製品には、エコでないことをアピールするマークを製品カタログ上で記しており、これからの3年間でそのマークをすべてなくすことを目標の一つにしている。環境ビジネスで日本NO.1の企業になるための取り組みの一環である。
経営課題としては、企業を取り巻く環境の変化にいかにして対応するかということが挙げられる。発注者や発注形態の変化、顧客からの要望の高度化、異業種からの競争相手の参入など、コクヨグループを取り巻く環境は絶えず変化している。その潮流の中で、コクヨグループに求められることは、新たな独自性を打ち出しながら環境の変化に素早く対応することであり、組織体系の見直しや新たなビジネスモデルの創出を行っている。組織の見直しという点では、業務対象の明確化や現場のスピードの改善、若返り化などを目的に、一昨年10月に分社化を行った。また、新たなビジネスモデルの創出では、オフィスソリューションビジネス(商品の提供だけでなくオフィスの総合コンサルタントへ)の提案やB2Cや海外事業の強化が挙げられる。
しかし、変化が求められる時代においても変えてはならないものは存在し、コクヨグループにとっては、「商品を通じて社会に貢献する」という経営理念がそれに該当するという思いが強く感じられた。
ITを戦略としてとらえると、従来までは経営戦略とIT戦略との間にそれほどギャップは存在しなかった。しかし、それは生産から販売、納品という物流業務の観点からでしかなく、本来の意味でのIT戦略とは異なり、ITを用いてオペレーションを合理化・省力化するというレベルであった。
これからのIT戦略は、様々なワークスタイルに対応できるITインフラの提供や、経営の迅速な意思決定に寄与する知恵・知識を共有できる環境の創造が主戦略となる。ITインフラの整備の一環として、オフィスのフリーアドレス制の導入や、帰社しなくても出先で勤務が可能な駅中などの立ち寄り所オフィスの開設など、ワークスタイルの自由度を高める試みは既に動き出している。知恵・知識の共有できる環境作りは、本来は各事業会社に任せたいところではあるが、個別の利益を追求してしまう傾向があるため、本部が全体最適を見ながら調整しなければならない。
ITガバナンスの側面からみると、グループ全体が一体になって理解して進めてくることができたいうポジティブな評価を与えることができる。しかし、現場が主体で進めてきたため、本部の情報システム部門より各事業会社の方がIT部門に詳しくなるという逆転現象も生み出した。
以上、コクヨグループを取り巻く大きな環境変化の中で、今後の課題は、分社化のメリットを最大限に活かした新たな全体最適やITの脆弱性を鑑みたリスクマネジメント・可視化・トレーサビリティー、IT人材の育成、独自性を保ちつつ必要とあらばアウトソーシングも考慮に入れた柔軟性との両立、知恵や知識の共有などが挙げられる。
特にIT人材の育成は、高度情報通信社会の現代において多くの企業や自治体が抱える課題であり、システム部門、ユーザ部門、果ては次世代のCIOに対する教育に頭を悩ませているのが現状である。
筆者は、幼少の頃より携帯電話やテレビゲームに携わり、生活の中に自然とシステムやプログラムが存在している現代社会の中で、社会に出てから情報に関する教育を受けるのは手遅れで、小学生や中学生の頃から情報に関する教育を施してもよいのではないかと考える。そのためには、もちろん教育者の育成も重要であり、企業のシステム化の最前線で活躍し定年を迎えた団塊の世代の再雇用先として、教育の世界に迎え入れてもよいのではないだろうか。それが、システム化の利便性ばかりをアピールし危険性は隠して情報通信社会を作り上げてきた、われわれ大人たちの責務ではないであろうかと感じた。 |
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| ■ 質疑応答内容(一部抜粋) |
【Question】
IT人材の育成と次世代のCIOに対する教育は、多くの企業や自治体が抱える課題ということであったが、コクヨグループではどのような教育を行い、どのような人材を求めているのか、また、IT部門とは異なる営業部門などに期待するIT能力があれば教えていただきたい。 |
【Answer】
技術的なITスペシャリストは極端な話、外部に求めても(アウトソーシングに頼っても)よい。重視しているのは、IT戦略を企画し、他部署や他社との折衝しグループ全体の最適化を行うことができるITアーキテクチャともいうべき人材であり、そのための教育を行っている。しかし、技術を外部に委託し過ぎると、コクヨの実務がわからないITアーキテクチャが育ってしまうという懸念もある。IT部門以外の部門には、全社のIT部門と各事業会社との橋渡しになることができ、ITと実務との両方に長けた人材が必要と考えている。 |
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| 以上 |
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