大阪市立大学大学院 システムソリューション研究分野
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ワークショップ・講演録
講演日時 2008年6月25日(水) 18:30〜21:20
講演場所 大阪市立大学大学院 梅田サテライト 102号室
講  師 合同会社キックティー
代表社員  吉田 耕治氏
講義内容 ベンチャーを起業することとは
報告者 安枝 真一、大塚 有希子

・はじめに
 今回の講師である吉田耕治先生は、大学卒業以来約20年間ICT業界一筋で、システムエンジニアを勤めた後、自らITベンチャーを起業されました。その後、大学発バイオベンチャーのCEOを務め、近年はその経験を活かしてベンチャー事業の立ち上げを支援する会社合同会社キックティーを2008年4月に設立されました。モットーは、「天国に行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである。」とのことです。本日の話は、この10年で起こった波乱万丈の人生についての紹介です。20年間サラリーマンであり、その後の10年をベンチャー企業の経営者をしていましたが、実際の体感時間は、サラリーマンの20年よりベンチャー企業経営者の10年のほうがはるかに長いものであったそうです。最初に吉田氏が述べたこの講演に関するポイントは、「講演の中ではしゃべらなかったことが大事」ということでした。
 
・講演内容
 吉田氏は、1999年にITベンチャーを立ち上げられました。インターネット普及初期のユーザーは一部のその分野に詳しい主として男性が多かったのですが、将来的にはユーザー数が増えてくる様相でした。素人でもネット内でほしいものが買える場に簡単にたどり着けるように、ショッピングポータルを作ろうと考えられました。楽天市場が販売者の売り場を目指したとすれば、吉田氏は消費者中心の買い場をユーザーに提供しようとしました。というのも、この当時、「なぜネットで買わないのか?」というアンケートでは、「ほしいものにたどり着けなかった」との回答が多くを占めていたからです。そして、消費者はネットショップでの商品の検索性を望んでいたのです。ネットでは、商品がおいてある場所が決まってしまっていました。スーパーの商品は、通常の種類別の商品置き場以外に、安売りのための店頭置き場、肉の横に焼肉のたれのような組み合わせによる置き場などがありました。「ネット上でもあらゆるところから商品にたどり着けるようにしたい(多次元検索)。」また、「出来るだけ少ないクリック数で商品に到達できるようにする必要がある」と考え、吉田氏はショッピングポータル立ち上げました。しかし、このコンセプトに間違いはないと確信しながらも、吉田氏のITベンチャーうまくいきませんでした。この失敗は、雑誌ダイヤモンドの「失敗に学ぶ」のトップバッターに選ばれたほどでした。吉田氏は反省点を次のように述べています。【ベンチャー企業としての経営に高い志が足りなかった。つまり、経営に対して「鳥の目、虫の目、魚の目」のそれぞれの目で見ることができなかった。そして、それ以前に、ベンチャーを起業する前に経営管理スキルを習得すべきであった。】
 吉田氏は次に、ベンチャー経営の道に入るきっかけとなった恩人の誘いもあり、バイオベンチャーの経営に携わることとなります。このときは先の失敗から得た教訓をもとに、確固たる技術力に基づくコアコンピタンスを持つことを心がけ、本物の経営を行うことを決心します。大学発ベンチャーとは、大学内にあるシードを製品にする産業界に橋渡しする役目であると考えられます。具体的には大学で研究されていたティシューエンジニアリング、細胞医薬品、ドラッグディスカバリーの3つのシードを製品化したいと考えていました。しかし、バイオベンチャーは非常に研究開発費用が要求される業種であり、資金難のためから、またしても吉田氏は断念せざるを得なくなります。このときの吉田氏の反省点は次の通りでした。【経営者、研究者間のコミュニケーション、相互理解の欠如。撤退のタイミング(使ったお金と成果のバランスの見極め)の誤り。理解していながら赤字を改善できなかった。】
 その後、吉田氏はご自身のベンチャー企業創業と経営の経験を生かし、ベンチャーの支援側に回ります。ベンチャーの置かれる状況は現在でも決して良いものではありません。BI施設でベンチャーを創業しても、何年かすれば出なければならず、その受け皿はないような状況です。多くのベンチャーは、物が出来ても販路が無い、若いベンチャーほど支援を受けるのが難しい、ベンチャーとその周りのステークホルダーとの間のサポートをするコーディネーターがいないなどの問題点を抱えています。吉田氏はベンチャー企業がうまく成長するためには、ソッタク同時(雛が卵から出てくるときに親は外から雛は中から殻をつつく状況)が必要と言われます。ベンチャーとその周りのステークホルダーとの間のサポートをするコーディネーターとして役立ちたいというのが吉田氏の考えでした。
 
・吉田氏からのメッセージとは
 私は製薬会社に勤めているため、バイオベンチャーが本当に医薬品を創生することができるのかどうかということに非常に興味がありました。そしてバイオベンチャーの内情についていろいろな質問をしたのですが、それは吉田氏のメッセージに対して的を射た質問ではなかったようです。吉田氏は、ITベンチャーやバイオベンチャーの中身について講演したいわけではなく、新しい試みを行うことが重要であることを訴えたかったのです。一貫した吉田氏のメッセージは、ベンチャーというものを立ち上げようとすることが、現在の日本の社会に必要とされていることであり、たとえ失敗することがあってもその失敗を学びとしてとらえることができる社会を作らなければならないということでした。吉田氏の言葉を借りるならば、「毒キノコを食べてその人が腹痛を訴えても、その周りの人はそれが毒キノコであることを学ぶことができる」ということです。失敗が受け入れられる社会を作ること、それが困難ではあるがもっとも重要であることがわかりました。
 
・おわりに
 講演の最初に吉田氏が述べられたこの講演のポイントとは、「講演の中ではしゃべらなかったことが大事」ということでした。公演が終わりその意味がどのようなことなのか、解は見つかっていません。その解を求め続けることが、新たなことにチャレンジし続けるという解なのかもしれません。
 
以上

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