大阪市立大学大学院 システムソリューション研究分野
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ワークショップレポート
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ワークショップ・講演録
(兼 創造都市研究科 重点研究『創造都市を創造する!』シンポジウム)
講演日時 2008年12月3日(水) 18:30〜20:20
講演場所 大阪市立大学 文化交流センター 小ホール
講演者 ・山本純氏
(財)デジタルコンテンツ協会企画調査部部長代理
・久保田彰氏
石州和紙協同組合代表理事
・黒木啓良氏
近畿経済産業局コンテンツ産業支援室
司会/コーディネータ ・小長谷一之(こながやかずゆき)
大阪市立大学大学院創造都市研究科教授(司会)
・近勝彦(ちかかつひこ)
大阪市立大学大学院創造都市研究科教授(コーディネータ)
講義(シンポジウム)内容 「コンテンツと地域再生 1
−無形の世界遺産とデジタルコンテンツによる地域発展」
記録者 小山 陽子

■講師紹介
○山本純(やまもと・あつし)氏
北海道八雲町生まれ、静岡県天城湯ヶ島町育ち。関西大学経済学部卒業。(財)デジタルコンテンツ協会企画調査部部長代理。日本電子専門学校2008年度講師。主な調査研究に、ソフトウェア著作権、ソフトウェア特許、コンテンツ市場統計、コンテンツ著作権、パブリシティの権利がある。

○久保田彰(くぼた・あきら)氏
石州和紙協同組合代表理事。1950年島根県三隅町に生まれる。亜細亜大学経営学部卒業後、父「保一」を師として手すき和紙製造に従事する。(社)島根県物産協会理事、(財)しまね国際センター経営委員など歴任。長年石州和紙の文化伝承に多大な貢献をされてきた。来年石州判紙が無形の世界文化遺産に登録されるにあたり、そのまとめ役をされた。

○黒木啓良(くろき・ひろよし)氏
1990年通商産業省近畿通商産業局入局(現:経済産業省近畿経済産業局)、2004年大阪市立大学大学院創造都市研究科(都市ビジネス専攻)に入学・2006年修了。現在、近畿経済産業局コンテンツ産業支援室に所属し、コンテンツビジネス推進を担当。

■趣旨説明
「文化資本創造による地域発展の可能性と課題」
大阪市立大学大学院創造都市研究科 近勝彦教授
 昨年世界遺産登録された岩見銀山を有する島根県が、最近活況を呈している。過去同様に世界遺産登録を果たした姫路城および宮島の例では、世界遺産登録を前後してそれほど観客動員数に変化は見られない。もちろん長期的規模で見れば、確実に観客増に貢献はしているだろう。これは例えばミシュランへ登録されたことで世界からの観光客へのアピールを果たしているからである。片や、龍源寺間歩の有料入場者数を見ると、明らかに世界遺産登録の直後から10倍規模で観客増が果たされている。
 当該石見では伝統産業である石州和紙が後継者難で衰退の一途をたどっており、将来をあやぶまれている。東京から物理的交通手段的に一番遠いといわれる島根県で、今後どのように生き残りを図っていくか。今回の世界遺産登録の好機をどのように活かしていくかが重要である。各方面からの示唆を得て地域活性の可能性を提言していきたい。

■講義1
「コンテンツ産業の現状と地域経済への寄与可能性」
 〜デジタルコンテンツ白書2008を中心として〜」
財団法人デジタルコンテンツ協会 企画調査部 山本純(あつし)氏
1−1) 財団法人デジタルコンテンツ協会とは?
 産業動向の調査、法的基盤(知的財産権)の調査、技術基盤の調査、海外に対するコンテンツ産業の振興事業、人材発掘プロジェクト、地域活性化、を行う、経済産業省の外郭団体。「デジタルコンテンツ白書」の出版と「デジタルコンテンツグランプリ」(今年で23回目)の実施を行っている。

1−2) コンテンツ振興の目的と数値目標
 文化と経済が同時に発展するのが国として理想の姿である。海外から見ても魅力のある国づくりを目指す。「コンテンツを活かした文化創造国家」をスローガンに、2015年までに市場規模18.7兆円の育成を目指す。(2007年実態で13.8兆円)

1−3) コンテンツ産業の現状とビジネスの仕組み
<収入方法>
「直接回収型」(対価支払型):ユーザが直接コンテンツに対してお金を支払う:メディア購入、劇場入場料、放送視聴料、etc。流通メディアに集約され、その後コンテンツ制作者に分配されるタイプがこれに相当する。
「間接回収型」(広告収入型):こちらの方が人気である。「無形のものに支払いたくない」という意識が働いているものと思われる。

<分配方法>
ライセンス型、製作費型、・・と多種の形態が存在する。

<コンテンツ分野別コンテンツ市場規模>
圧倒的に、テキスト系(書籍、新聞)&放送系(無料視聴のテレビ)
各ジャンルの割合と順位は過去5年ほどほとんど変化がない。
日本人の楽しむコンテンツの主流は常に同じ。海外も同じ傾向にある。

<流通メディア別コンテンツ市場規模>
パッケージ流通→放送流通→拠点サービス流通→インターネット流通→携帯電話流通、の順に大きい。最近は、パッケージ流通量が若干落ちた分をインターネット流通が拾っている。市場が広がったわけではなく、メディアの置換が起こった、と考えている。今後、放送流通からインターネット流通への置換が起こるのでは。キー局・準キー局が集中する首都圏に対し、地域ではインターネット流通を活かした情報発信が狙い目であろう。

<成長分野>
テキスト(電子書籍、携帯小説、携帯マンガ)、コンサート、インターネットおよび携帯の映像配信、音楽配信、レンタル映像、などのジャンルが増加すると思われる。

<デジタル化率の推移>
全体的に見て20%を超えていない。ただし、2015年には半分以上がデジタル化されている見込みで、映像系はほぼデジタル化されるであろう。新聞図書画像テキスト系は最後までアナログが残ると思われる。

<白書2008により見えた将来的展望>
●全体的に成長が鈍化している。市場の圧倒的な拡大を図る必要がある。主な原因は、受け手となる人口が減っている(コンテンツ消費者の核は10代〜30代)からであると思われるが、特に活発な20代の可処分所得の減少も一因であろう。
●UGM(UserGeneratedMedia)は伸びるだろう。新たな利用形態による市場拡大を狙える(Ex.ニコニコ動画)。日本全国や世界を消費地化に見たてた地域発信型コンテンツによる市場拡大が可能であろう。
●国際展開により、世界を日本発コンテンツの消費地化できる。以上、実はそうそう悲観的な環境条件ではないと言える。
●IT親和性のある能動的利用者世代の全体人口は拡大していく。
●著作権の法的問題(利用権)のために海外ベースのコンテンツサービサー(YouTube、iTunes)に依存している現状は、非常に不利である。フェアユースに関する法的改正を前向きに検討すべき。
●ユビキタス環境の整備が順調であり、個人レベルでは非常に進んでいる(Ex.携帯電話)。今後は公共レベル(デジタルサイネージ、大〜小規模映像音響空間、他)でも伸びが期待できる。
●ブロードバンド環境の整備は順調。地域から大容量コンテンツの発信に十分耐用できるレベルを実現している。
●ITを利活用にしたコンテンツが豊富化。大企業以外の中小&個人レベルのコンテンツ制作者の増加している(SNS、ブログ、投稿サイト)。
●日本ならではの高精細映像化技術に伴うコンテンツの用途拡大が望まれる。劣化しやすい文化財のデジタルアーカイブ、地理情報、医療(遠隔治療・手術)、気象天文
●コンテンツには国境がない。ハード&ソフトを一体化した輸出が可能である。

<地域コンテンツに関して>
●コンテンツによる直接経済効果が見込める。
 例)2008年度デジタルコンテンツグランプリ錦賞受賞の映画「琉球カウボーイ、よろしくゴザイマス。」 出演者&スタッフとも全員沖縄県人による制作。出演料を債券化し、映画成功に伴い利潤を配分している。
●コンテンツの経済波及効果を得るためには。
コンテンツの発信と同時に、受け皿を地域全体で準備する連動性が必要(Ex.看板や観光資料を全て多言語表記にする。商工会と町おこしを準備する)。
●従来のハード型町興しは負の遺産(負債)が継続するもの。コンテンツ型町興しなら、建設料などの物理的な負債が残りにくい。
 例)「初音ミク」=札幌拠点の音素材制作ビジネス企業(クリプトンフューチャー)。
 企業創業の成功により、地元出身者の雇用開拓のみならず他県からの流入も期待できる。

<海外市場に関して>
●日本のポップカルチャーを高く評価する国が多い。
 例)「POLYMANGA」ジュネーブで毎年4月開催。
 例)「マンガ博物館」ブリュッセル
●コンテンツを作る能力=ストーリーテリングと映像化が同時に必要。日本では、漫画家にその能力が集積している。それを日本の経済力の底上げに結び付けない手はない。
●日本文化への関心やニーズが高まっている。
 例)中国の「味千ラーメン」、サンパウロの日本レストラン
 例)「Ray」は中国の方が発行部数が多い。体系・皮膚の色が似ている、地域性が幅広いので最適コーディネイトを選択しやすい。
●日本文化に憧れる外国人が増加しており、それに伴い観光客が増えている。非常に穏やかな国民性を理解する人が増え、具体的な経済効果も期待できる。

<地域発信コンテンツの発展に立ちふさがる問題>
「直接経済効果」「過疎化対策」「文化力の向上」などのメリットに伴い、「権利問題の発生」
「公的資金により制作されたコンテンツの著作権帰属問題」「せっかく作ったコンテンツをキー局がある東名阪へのクリエイタが結局持っていく」といった新たな問題も生じている。地方にはこれらをうまくコントロールできるプロデュース能力が欠如している。その育成が重要課題である。
結論⇒以上、チャンスは様々にあるので、ジャンルや好機を大切にして大きな経済活動に繋げるべきである。

■講義2
「石州和紙について」
石州和紙協同組合代表理事
久保田彰(あきら)氏
 石州和紙は「延喜式」(905年)に登場しており、1300年の歴史を持つ。楮(こうぞ)100%で、既定の用法で作られた半紙のみを「石州半紙」と呼ぶ。
手すき和紙の製造者は全国に300近くいるが、そのうち「石州和紙」の制作者は4名しかいない。重要無形文化財「石州半紙」は1969年に指定。ただし、県を通さずに勝手に申請した、とみなされ、自治体レベルの保護は一切受けられなかった。
 現在は技術維持と後継者育成が主眼で活動している。総合的信仰を図るために協同組合を設立し、1989年に「伝統的工芸品」の指定を受けた。特に海外へのアピール活動は積極的に行っている。海外において製造実演を行ったのは「石州和紙」が最初。また、海外からの技術研修員を積極的に受け入れ、技術指導を行っている。ブータンにおいては、受け入れと同時に指導者派遣も行っている。
 「ユネスコ無形文化遺産」の指定候補に選定にされたに伴い、「後継者育成」「伝承者育成」を主眼に、今後は世襲制にこだわらない、外部からの継承者採用に乗り出している。
「石州和紙会館」を2か月前にオープンし、この工房で人材育成を行うことを検討中している。今後は制作した職人の記名入り商品を発信するなど、石州和紙のブランド確立に専心したい。
 和紙は500年の歴史を持ち、風土と自然に依存した工芸である。それに関与できる喜びは計り知れない。正直、指定を受けた故の気苦労も多く、「陸の孤島」だから集中できていることも多い。来年のユネスコ世界無形遺産指定に向けて、気の緩むことなくやっていく。

■講義3
「コンテンツ産業の現状と新たなコンテンツビジネスへの期待」
近畿経済産業局コンテンツ産業支援室
黒木啓良氏(当創造研究科修了生)
 関西のコンテンツ産業市場(従業員ベースによる)は14%程度であり、東京に一極集中している。全国的にいえば、ゲームのみが輸出黒字化し、コンテンツ産業全体の輸出を支えている。
 コンテンツ分野が可能にする産業イノベーション側面には下記のようなものが考えられる。
●新技術とコンテンツの融合
 例)液晶&プラズマディスプレイと寝室・会議室・テーマパーク・etc
●他作業とコンテンツの融合
 例)海洋堂のフィギュア=食玩
●製造業とコンテンツの融合
 例)取扱説明書、試作シュミレータ
●サービス業とコンテンツの融合
 例)医療での患者説明の効率化
 例)販売促進を目的としたゲーム
 例)マンガを使った法律書
 先日、「大阪創造取引所」というコンテンツサービスの展示会を行い、その中でバイヤーが並ぶブースで、コンテンツクリエイターが手を挙げるマッチングを行った。すると、バイヤーとして通常では考えにくい企業達(例:浜学園)が多数名乗りを挙げ、コンテンツクリエイターとの商談を多数決めていった。今までのコンテンツは「なくても死なない」という内容だったが、今後は産業振興の一手段として利活用されるものになるはずだ。
 また、地域資源の効果的な発信手段としてのコンテンツを目指すべきである。
※本来は、この後のパネルディスカッションにより、地域発信の今後について語り合う予定だったが、時間不足のために達成できなかった。

■質疑応答
Q) 和紙の用途として、用紙以外にもインテリアなどへの転用も考えられるが、用途開発・製品開発についても協同組合は行っているのか?。
A) 現在、和紙のほとんどは修復用途に使われている。品質と安定供給を目指すところが第一歩。もちろんいろいろな検討はしている。

■感想
 最近はデジタル対応ケーブルテレビのおかげで、高精細な地方紹介の番組を見られるようになった。先日偶然にBSデジタルハイビジョンチャンネルで伝統和紙の製造工程を見たばかりだったので、石州和紙の講義には非常に親近感を感じた。私は「世界遺産」「世界ふしぎ発見」といった世界各地の風俗を紹介する番組を好んで録画しなら視聴している。この逆に、各世界の人々が日本の地方風俗を間近に見られる時代がすでに来ている。そのために必要なのは、日本のコンテンツの容易な多言語化体制と、さまざまな風俗や文化を(できればデジタルハイビジョンの)映像として録画する体制であると思われる。
 石見は、日本を飛び越えて世界に訴求するコンテンツとなりつつある。日本のよさを日本人自身が気づいていないのは、地方情報が特に首都圏や他地方に向けて発信する基盤が整っていないことも理由の一つであろう。良質の地方紹介番組を組んでいるBSチャンネルをさらに多数の人が見る風潮ができるとよい。ただ、最近若い人が海外旅行に行こうとしない傾向があり、「テレビなどでいつでも見られるから、取り立てて見に行く必要もない」という理由を挙げている人が多数いるらしい。映像で見ることと実際に体験することは別である。映像を見ることで実際に体験したくなる→具体的な経済効果として威力を発揮する、そんな魅力的かつ思わせぶりなコンテンツが多数仕上がることを期待する。そのためには、収録画像が高精細すぎるのも問題かもしれないが・・・?
 なお、黒木氏による、コンテンツと既存産業の融合による経済イノベーションの指摘は非常に面白かった。確かに、コンテンツにより活性化するサービス分野は多数ある。日本ならではの高度な技術と柔軟な視点に頼れば、ソフトウェアコンテンツ開発の可能性はまだまだ残されている。最近は米ハリウッドのコンテンツクリエイト能力が薄らぎ、多数の日本発コンテンツが米映画産業を支える時代になっている。日本のコンテンツ創造力発揮側面はまだこれからである。産業イノベーションの視点で、今後のコンテンツ産業の在り方を見つめていきたい。

以上

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