大阪市立大学大学院 システムソリューション研究分野
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ワークショップレポート
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ワークショップ・講演録
講演日時 2007年6月6日(水) 19:00〜21:30
講演場所 大阪市立大学大学院 梅田サテライト 102教室
講  師 日本アイ・ビー・エム株式会社
常務 西日本担当 山本 哲男氏
講義内容 ビジネスイノベーションとIBMの変革
報告者 安田 朋平、坂 直樹

■ 講師経歴
  IBMで38年勤務。関西を担当するのは26年ぶり。
経済同友会の代表幹事だった北城氏に次ぐ年齢。
IBMアジアパシフィック責任者を歴任。
現在は西日本担当として静岡〜沖縄までを担当。
 
講 演 内 容
■経営環境とイノベーション
【急激な世界のフラット化】
「The World Is Flat」Thomas L. Friedman(フラット化する世界 トーマス・フリードマン著)。
現在起きている世界の潮流がわかりやすく、明確に書かれている
IBMが市場に発信しているメッセージとほぼ同じ内容である
世界の3つの大きな潮流
@ リアルタイムコラボレーション(インターネットによる社会・経済活動の場の創出)
A BRICsなど新興経済国のグローバル経済の参入
B 様々な企業による水平的協働
キーワードは、「差別化」
グローバルリソーシング
中国・インドを中心に人口が多い国へスキルリソースが流れている
Ex.)プログラミングやコールセンターなどはインドが活用。
   日本IBMでは人事や購買業務はマレーシアで行っている。
【不確実なビジネス環境】
4つのポイント
@ 競争のグローバル化(M&A、外資参入、中国・インドの台頭など)
A 技術革新(ワイヤレス・ブロードバンド化など)
B 規制緩和・強化(企業の社会的責任(SOX法)など)
C 社会の変化(トップ企業に追随すればよかった時代から考えないと生き残れない時代に)
【イノベーション】
イノベーションについてのメッセージの増加
日経連会長(御手洗氏)、イノベーション担当大臣(高市氏)、トヨタ、ソニー、GE
IT業界は二極化が進んでいる。
@ コモディティ化 ・・・Dell
A イノベーター ・・・IBM、SONY、GE
テクノロジーカンパニーとして、膨大な開発費を投入してきたが、結果として価格を下げることになった。
 →付加価値をつけないと、事業として成立しない。
 →イノベーションが必要。
イノベーションはインベンション(発明)とインサイト(洞察)の交差から生まれる
Ex.)最近のヒット商品から見るイノベーション
□旭山動物園  : 動物の生態を間近に見ることができる(行動展示)
□QBハウス  : 水を使わない理髪店(顧客が家でできるサービスの排除)
□斜めドラム式洗濯機  : 洗濯物の出し入れを楽に(新たな利便性)
□任天堂DS  : 中高年・女性などの新しい顧客層を開拓
最新のテクノロジーは、あまりない。インサイトがポイントになっている。
インサイト=市場の要求
The Global CEO Study 2006調査結果
世界のグローバル企業950社の経営者へのアンケート(日本90社程度含む)
CEOの65%が今後2年間に広範囲でのイノベーションが必要であると考える
ビジネスキーワードの変遷
企業経営の効率化(2003年)→成長(2005年)→イノベーション(2006年)
イノベーションは製品やサービスだけでなく、ビジネスモデルも。
イノベーションの為には社内外のコラボレーションが重要。
トップ自らが、意識を高めイノベーションに取り組んでいる。
トップがNO.2に期待する能力=「イノベーションを推進し、マネジメントできる能力」
イノベーションに対する日本の特徴
日本企業のCEOはイノベーションに対して積極的
日本のCEOの86%がイノベーションが必要であると考える(世界のCEOは65%)
イノベーションの推進主体が「CEO自ら」と表明している度合いが高い
イノベーションの対象はビジネスモデルレベルであると主張する度合いが高い
しかし、推進は社内部門に依存→現実と意識とのギャップがある。
       ↓
      IBMが最高のパートナーとなるキーがここにある。
企業経営のイノベーション
イノベーションを醸成する企業風土(トップの意識が重要)
ビジネスモデルの変革
社内外でのコラボ推進
迅速な意思決定と実行
テクノロジーをイノベーションのトリガーとして利用
イノベーションを担う人財の育成
■IBMの考えるイノベーションとは
【6つの視点と4つのキーワード】
製品、ビジネスプロセス、経営と企業文化、サービス、ビジネスモデル、政策と社会
Ex.)IBMのビジネスモデル変化。ハードウェア売上9割⇒3割。
   松下電器のサプライチェーンマネジメントのビジネスの変革
    (ビジネスプロセスの変化によって、イノベーションを起こした。)
エリアによってバラバラだった新製品発表を同時発表に。
4つのキーワード
オープン、イノベーション(統合)、コラボレーション(協働)、グローバル
【イノベーションの事例】
コラボレーションによるセルコンピュータの開発
CPU技術(IBM)、ゲーム・エンターテイメント技術(SONY/ SCE)、画像技術(東芝)
METROグループ(ヨーロッパ最大のスーパー)のワイヤレス・RFID技術活用
カートにある画面に商品の情報、ノーキャッシュによるセルフ精算
岐阜大学医学部付属病院の医療情報の統合化・可視化
カルテなどの医療情報のデータベース化、各診療科での共有化
【Innovation Jam 2006】
IBM Jam
IBMの3つの信条(経営理念)をベースに「今、IBMが提供できる価値は何か?」をボトムアップによりWeb上で決める(2003年から)
信条:お客様への最高のサービス、完全性の追求、個人の尊重
Innovation Jam
IBM Jam同様のWeb上でイノベーションのアイデアを意見交換する場
Innovation Jamから導かれた5つのイノベーション
> 環境問題・飲料水の供給のためのナノテクノロジー技術
> ワイヤレスを活用した遠隔医療
> 人間の気持ちを理解する携帯電話(本当に欲しい情報が即座に携帯に配信される)
> リアルタイムの音声翻訳
> 三次元インターネット(セカンドライフ(仮想空間))
  これらの実現技術に対して2年間で1億ドルを投資。
■IBMのイノベーションと戦略
【IBMコーポレーション】
IBMの会社概要
売上高:914億ドル
税引後利益:95億ドル
研究開発費:61億ドル
設立:1914年
取締役会13名(1名のCEOと12名の社外取締役)
ワールドワードに同じ組織体制を敷く。
ローカルのIBMを経由して世界中のIBMを利用できる。
IBMの歴史
肉屋の秤→タイプライタ→カード式計算機→コンピュータ
> 1990年:一兆円企業に(日本IBM)
> 1991年:全世界のIBMが減収減益。
(IBM自身が市場の変化(汎用コンピュータからパーソナルコンピュータへのシフト化)に乗り遅れた)
> 1993年:外部からCEO招聘。企業のスリム化を図る。(最盛期従業員45万人→22万人)
> 1994年:ビジネスをハードウェアからソリューションへ
> 2002年:2度目の変革へ(顧客満足から顧客の成功支援へ)
【ビジネスモデルの変遷】
1980年代
製品を通じて顧客の生産性向上を実現。(主な顧客はIT部門)
1990年代
ITソリューションの提案を通じたリエンジニアリングの実現。(主な顧客はラインスタッフ)
2000年代
顧客の変化=顧客自身が、何をやりたいのか、わからない。
       ↓
ビジネスソリューションを通じた変革の実現。(主な顧客はCEO)
90年代までの「顧客満足度」重視から「顧客の成功」重視へ変化。
現在では、売上の半数以上がコンサルティングを含むサービスである。
コンサルティング、システムインテグレーション、戦略アウトソーシング、
ビジネス・トランスフォーメーション・アウトソーシング
IBMは世界最大のコンサルティング会社であり、サービス会社であり、最新のテクノロジーの会社である。
【グローバル経営への変革】
  「地域」「製品・サービス」「顧客の業種」の3つのセグメントによるマトリクス経営を推進。
情報システムがマトリクス経営を可能にした。
「IT革新なくして経営革新なし。」(松下電器 中村会長)。
【IBMのバリューネットワーク】
コアテクノロジーに対する投資
全世界にノーベル賞レベルの7〜8箇所の研究所を有し、長期研究開発を実施している。
M&A
対象は、コンサルティング会社やミドルウェアの会社。
パートナーとの連携プレー
以前のコンペチタも取り込んでネットワークを広げている。
【IBMの目指すモデル】
  「顧客親密性」・・・積極的に提案するために、顧客以上に顧客を知る
山本氏の仕事は、経営トップが何を考えているかをキャッチすること
【日本IBMグループの中期戦略】
  「お客様にイノベーションによって成功していただくための、最も信頼されるパートナーとなる」
 
質 疑 応 答
Q1. 顧客の成功とはどういう状態をいうのか?顧客満足度との違いは?
A1. イノベーションによって企業が市場に認められ最終的に儲かること
企業が顧客にとって特別な存在(差別化・特異性)になるための変革
会社が変革するために支援し、プロとして経営課題を引き出し、成功へと導く
Q2. 日本で成功している企業の代表格であるトヨタはイノベーションよりもカイゼンであるが?
A2. トヨタほど変革にシリアスな企業はない(絶えずトヨタの10年先のあり方を考えている)
車はソフトウェアの塊であり、カイゼンではできない。イノベーションの塊でもある。
九州の鋼材卸業の松本商店のイノベーションはトヨタのジャストインタイムであった。
Q3. コアテクノロジーへの投資は、現在のIBMのビジネスモデルと整合性があるのか。どのような位置付けで研究開発を行っているのか?
A3. IBMはテクノロジーリーダーでないと生き残れない。
コアテクノロジーの開発を持続的にできる企業は世界に数えるほどしかない。
社会の変化に対応するにはコアなテクノロジーが必要。
現在は、5〜10年先のテクノロジーを開発することを企業としてのよりどころにし、それを支えるビジネスを開発していく。
Q4. なぜIBMはこのようなビジネスモデルの転換ができたのか?(Q3の回答をいただき、メーカがものを作ることをやめるのは、大きな決断であったと思っていたが、コアテクノロジーの開発を継続されていたことに納得した。)
A4. 付加価値を提供するビジネスモデルを展開するために、コアテクノロジーを持っておく必要がある。
コアテクノロジーが「根幹」であり、付加価値は「付加」でしかなく、主ではない。
IBM means service.
IBMは変革をいとまない企業(変革が多いが一本線がとおっていて、かつ速い)
変革によってビジネスをクリエイトしている
Ex.)ハードウェアとソフトウェアの価値を分離、コンピュータの教育有料化などはIBMが始めた。
これにより新しい市場が生まれた。市場を創造していかないといけないという企業の命題がある。
パソコン事業のレノボへの売却。(パソコンはすでにローテクの世界)
コンサルティング企業を買収したが、コンサルティング企業の問題は、顧客はコンサルティングの結果を即座に効果として手に入れたいが、それにはデザインして作りこむ能力が重要となる。
IBMはITが元の会社であるためこの能力に長けており、コンサルティングから作りこむまでシームレスに提供して成功している。
 
総 評(湯浅先生)
【イノベーション】
  「イノベーション」という言葉は古く、シュンペーターまで遡る。
ケインズは「経済システムはやればやるほど膨張する」。シュンペーターは「経済システムはある程度限界があって、打破するにはイノベーションが必要である」
現在、変革のマネジメントが重要
(課題は、環境の変化がはげしい。情報技術の進歩。情報の非対称性。)
【ビジネスバリュー】
  ポーターは「コストリーダーシップ」「差別化戦略」「集中戦略」の3つのうち1つの戦略を選択しなければならないとした。しかし、日本と米国では、コストと差別化など2つの戦略を実現する会社が出てきた。
そこで、BSC(1992)、コアコンピタンス(1994)、世界No.1企業の法則が出てきた。
世界No.1企業の法則は、オペレーションエクセレンス、プロダクトリーダーシップ、カスタマインテマシーの3つである。
IBMはカスタマインテマシーを選択し、成功している。
我々がチェンジリーダーとなり、現場での経験と社会の知を融合し活用していかなければならない。
ビジネスバリューを、自分の企業、社会に発信していかなくてはならない。
 
以上

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